筒井康隆の短編集4冊読んだので、オススメの収録作品計14作をどどっと紹介するよ。
たつぃーです。
今日は筒井康隆作品大好きな私が、短編集を改めて読み返したので各短編に収録されている作品を14個紹介するよ。
彼の作品の良いところは、肩の力抜いて物語に没入できるといいますか、余計なこと考えずにふら〜っと読み始めてもその多くが皮肉やブラックユーモアが効いていて、気づくと何作品も読んでしまう中毒性にあると思います。
今回紹介する短編集もテンポが良くて、10分20分で読める作品もあるので、私のようにうつ病で元気が無くても面白くてどんどん読み進められると思います。
SFとか時代小説とか題材の幅が広いのも飽きずに読み続けられる要素じゃないでしょうか。
それでは紹介します。
※注意※あらすじ や 引用 を含みます。ですので、ここから先は自己責任でどうぞ。
①原始人(文春文庫)
13作品収録の短編集です。軽く読める上に、しっかりユーモアが効いている作品が多いです。
⑴原始人
原始人である彼の太古の生活を描いた作品。
己の欲求を満たすことに従順である原始人は、奪い・襲い・そして射精する。
しかし粗暴さ溢れる原始人にも未成熟ながら心の葛藤があって、そういう緻密な描写も大好きな理由の一つです。
筒井康隆らしいブラックユーモアの効いたラストは必見。痛快な作品です。
⑵アノミー都市
近未来SF。現代常識と異なる社会にくらす主人公(おれ)の倫理道徳・行動動機が破天荒で面白い。
例えば下記。
勤労意欲が湧いた、ということはつまり、腹が減ったということだ。腹が減ってもいないのに働く、などというのは不自然だし働かなくても食える世界ではあるけれども、働きもせず、ぺこぺこに腹が減っているわけでもないのに食わねばならないというのは実に不愉快なものである。(P28)
勤労意欲が湧かない私ですが、読み進めていくうちにアノミー都市での特殊な勤労形態がわかり始めると、確かにこの思考も腑に落ちますねー。
破天荒な主人公の行動が読めないので、気づいたらページをどんどんめくっていた!そんな作品。
⑶読者罵倒
筒井康隆に叱られたい人は必ず読みましょう。12ページかけてみっちり叱ってくれます。
⑷おれは裸だ
高志くんはホテルで人妻の泰子と合体中に火事に遭ってしまった。彼は一流エリートサラリーマンなので人妻との浮気がバレるといけない。ということで野次馬だらけ火災現場から急いで逃げ出すこととなって……。
お腹抱えて笑いました。
もう冒頭から爆発してますね。嫌な予感がぷんぷんするシチュエーションに加え、「おれは裸だ」というタイトルからして、おそらく推察ができるでしょう。
これ以上の紹介は野暮かと思いますので続きは読んでみてください。笑
②ポルノ惑星のサルモネラ人間ー自選グロテスク傑作集(新潮文庫)
ポルノ惑星のサルモネラ人間―自選グロテスク傑作集 (新潮文庫)
- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
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なんだこの下品な本は!!!!!(直球)
「時をかける少女」のイメージがある方はびっくりすると思いますが、筒井康隆さんの作品です。
おそらく有名だと思いますし、私にとっても筒井康隆作品といえばこちらが印象深いです。
計7作品収録の短編集ですが、著書名同作品の「ポルノ惑星〜」は長めです。とても10分では読めません。あしからず。
⑴ポルノ惑星のサルモネラ人間
未知の星ーポルノ惑星ーの研究基地で調査隊員の唯一の女性島崎博士が妊娠した。
なんと原因不明である上、発見時には出産まで数日もないほどの逼迫した状況であった。島崎博士を救うべく、緊急会議を開いて惑星探査チームを編成(3人)し事態解決の鍵を握る情報を入手すべく、ポルノ惑星の宇宙人集落ママルダシアへ向かう。
しかし、ポルノ惑星に住む動植物の独特な生態系に一向は苦しめられることとなる。
一通り、いや何度も読み返しての私の感想は、非常に知性的な作品です。
生物や生態系に関する各種の理論が出てきて、しかもその全てがいやらしい世界を肯定するための論拠であって、ただの下ネタ作品にはない知的欲求をくすぐる意図を感じずにはいられない。
つまりこの作品はとんでもなく頭のいい人が本気になって考えた末に生まれた壮大な下ネタであり、作品としては「知的好奇心」と「いやらしさ」を内在する綺麗なSFとして昇華されたものである。
綺麗というのは、いい小説は読後のスッキリとした感覚があると私は常々思っているのですが、その感覚を刺激してくれたという意味で、作品の首尾が良く綺麗だという感想を持ちました。
まあ色々書いた上でナンセンスかもしれませんが、「ひとまず読んでみてよ。笑えるから。」って言って勧めて回りたい作品の一つです。
しかしタイトル上、あまり親しくない人に勧められないということで、ヤキモキ感を長年持っていましたので、なんというかそういうしがらみのないこの場を借りて「ぜひ読んで」っていう叫びをあなたに伝えたいです。笑
③くたばれPTA(新潮文庫)
短編集。24作品収録。今回紹介する中でも一番作品数も多く、一番薄い本です。
10分少々で読めるライトな短編が多いので、隙間時間に持ってこい。
私はカレーを作りながら、読了しました。笑
⑴落語・伝票あらそい
ええ、あれです。友人や彼女と外食後の会計時に、「私が払うよ。」「いえいえ私が。」とお互いに言い合う、あのやりとりを落語仕立てに皮肉った作品です。
ちょうど落語の台本を読んでいるような格好になります。
この作品、実際に落語家に演じてもらうことがあるのであれば、一度見てみたいですね。個人的には、大学の落研とかでこういう寄席あると面白いと思うんだけどな。
⑵ナポレオン対チャイコフスキー世紀の決戦
チャイコフスキー隊長率いる大オーケストラ戦闘部隊による熾烈なバトル小説。
クラシック(?)の威風堂々とした用語が踊ります。
モスクワを守れ。急テンポの戦闘準備だ。変ホ短調の戦闘配置をとれ。アレグロ・ジュストに散開せよ。(P68)
この表現一つ一つの迫力は、言葉(表音や語呂)そのものの持つ力強さが活きていて面白い。
⑶蜜のような宇宙
すっごくロマンチックな近未来モノです。
一人の少年がスーパーコンピューターに恋の相談をするんですけど、スーパーコンピューターは答えに困ってしまうんです。どうやって彼の個人的な質問に答えるのか気になりませんか。
⑷レモンのような二人
青春恋愛モノにして、筒井康隆らしい毒気が感じられる傑作。
⑸モケケ=バラリバラ戦記
地球の植民星であるモケケとバラリバラ。この度両星間での戦争が始まったことで、一人の宇宙人が家族と離ればなれになってしまう。
次元放浪の末にやっとの思いで家族と再会した時、彼を待ち受けているものとはいったい。。。
④最後の喫煙者ー自選ドタバタ傑作集〈1〉(新潮文庫)
計9作品収録。SF好きの私のツボを捉えた良作(時間を題材にしたもの)が多く、個人的に一番好きな短編集です。
⑴急流
ある日、時間が加速した。
その加速度に伴って社会に様々な問題が生じていき、それらに翻弄されていく様を一人の会社員の視点で描いていった作品。
「時間」というメタファーを用いての社会に対し皮肉っており、その視点の鋭さが面白い。
⑵問題外科
これは、筆舌し難い。大問題作であることは間違い無いのでしょうが、とにかく滅茶苦茶です。(賞賛)
筒井康隆の臓器の表現てなんであんなにグロテスクなんでしょうか。
そして、そのグロテスクな表現にも負けないくらいに個性的なキャラクターが揃っていてストーリーもユーモア満点。
ああ、私の言葉でうまく表現できないのがもどかしい。問題作ってことは伝わると思うんだけど。
⑶ヤマザキ
信長の死を知らされた時、秀吉は毛利方の長である清水宗治が籠城する高松城を水攻めにしている最中であり、信長の救援を待っていたが、信長が死んだことにより事態は一変窮地に立たされる。
毛利方へ信長の死を悟られると、これを好機と陣へ攻め入られるだろうし、背後には裏切り者の明智光秀の軍が秀吉の首を取らんと進軍しているはずである。
この挟み撃ちをいかにして打開するか、というのがこの物語のミソである。
ただの時代物ではない、時間を操る作家筒井康隆の本領が遺憾なく発揮された傑作である。
⑷喪失の日
藁井くんは秘書課の野口さんに思いを寄せていた。
ある朝、野口さんに呼び出された藁井くんは「今日ならOKよ」と囁かれる。
以前のデートで野口さんをホテルに誘った藁井くんは「今日はだめ」と一度断られるのだが、その返事であると悟り、舞い上がった。
童貞の藁井くん。デスクに着き仕事をするも、今日の退社後のことを思うと手につかない。ひたすら妄想に耽る藁井くんを描いた作品。
まとめ
皮肉やユーモア、時代物、SFが好きな方はもちろん、読み物としても軽いものが多いので久しぶりに小説読もうかなって方へもオススメの作品でした!